見舞客を迎えても平気!オシャレな医療用ウィッグ
見舞客に「これ、医療用ウィッグなのよ」と話してみると、だいたいの人は、「へえ、そんなふうには見えないわね。ずいぶんオシャレでしっかり作られているのね」と、そんなふうな感想を言ってくれます。入退院が長くなると、友人にもご近所さんにも自分が抗がん剤治療を受けていることがだんだんオープンになり、こんな会話も平気になります。もちろん中には「医療用って何?」と聞いてくる人もいるので、そういう場合は、簡単に説明するようにしています。私にとって医療用のウィッグというのは、完全なおしゃれ着になりました。病室にいるときも、とくに見舞客がある日は鏡に向かって自分に気合を入れ、可能なら軽く紅やチークをつけたりもします。
ウィッグは最後の仕上げプロセスです。ウィッグを着け終わると、背筋がピンと伸びてお客様をお迎えする準備が完了。こういうメンタルな部分でのコントロールができるようになるまでは、お見舞いもお断りして“ベッドに引きこもり”という状態でした。私を現在のように変えてくれた要因は2つあります。1つはアメリカのドキュメンタリー番組です。あちらのガン患者さんは、入院していても日中はほとんどベッドに横にならず、院内でリハビリしているのだそうです。それを自宅で観ていて感心し、私もと気持ちを切り替えることにしました。2つめは、いま被っているウィッグに出会えたことです。それまでの製品は、ウィッグの毛髪にナチュラルな感じがなく、パサついてまとまりがない感じでした。見るからに被ってるという製品だったので、正直、着けるのがとても苦痛でした。
女性は「美しい」と思えれば自信ができ元気になれる
女性はきっと、自分が美しいと思えれば自信がついて元気になれる生き物だと思います。だからたとえ医療用ウィッグでも、見た目の美しさやキレイさに首を傾げてしまうような製品はイヤなのです。アメリカの番組を観て「頑張らなくちゃ」と思っていたときに、ネット通販のサイトで見つけたのが、最初に記述した“オシャレでナチュラルな感じのウィッグ”でした。もう3台めになりますが、つむじの部分の地肌の見え具合とか形が自然で、髪全体に適度なツヤがあってまとまっている、そんなところがいちばん気に入っています。頭全体を覆うウィッグの場合、自然な風合いというのは、ありそうでなかなかない製品なのです。
私が愛用している「シルフィ」というウィッグは、機能も凄いのだけれど、見た目もこだわっているウィッグ。おそらく女性の方からの意見が相当寄せられて、それで懸命に改良を重ねていった結果ではないかと直感しています。この細かな気の使い方は、女性目線でないとなかなか追求しきれないものです。髪の色のバリエーションやスタイルも豊富で、カット、ボリューム調整、カールなども無料でやってくれました。自分の写真を送ったり、雑誌の切り抜きまで送って注文をつけたりもしましたが、工房の方がとても誠実な職人さんで、とことん付き合ってくれたのがすごく印象的でした。軽くてズレない独自の工夫があるうえに、ヘアサロンでオーダーするような髪型にまで応じてくれて、女性患者としてこれ以上うれしいことはありませんでした。女心のわかるヘアスタイリストといった感じでした。こんな私にしてくれて、みなさんには感謝しています。