顔がナチュラル系なら、医療用ウィッグもそれなりでいい
化粧をして外向きに整ってしまった顔立ちの女性より、化粧を落とした素の状態の顔のほうが好きだという男性は意外に多い。あどけなさがあって、一緒にいても心が和むそうである。
「女が化粧した顔は戦闘服を着た男と同じ」とある男性が言っていた。働く女性はキリっとした顔をつくる、近所のママ友とショッピングに行く女性は、女性らしい華やかさをメイクや服に一工夫~。
そう言われてみれば、私たちはつねに顔の瑞々しさや美しさで競い合ったり、密かに自慢したりしているようなところがある。私はかつて、医療用のウィッグをオーダーするとき、「どうせだからもっと美しい髪色のもの、もっと色つやのいいもの」と、見てくれにこだわって注文していた。
しかしあるとき主人から、「今度のウィッグ、ちょっと浮いてないか? そんなに気張らなくても自然な感じでいいんじゃない?」と言われた。
50才半ばを過ぎて白髪の出てきた私の本来の髪は、主人が指摘するように、ピカピカの色つやなどない。顔の張りや色つやもそれなりなので、よく考えてみるとウィッグとはアンバランスなのだ。
主人はそれとなく、そう言っていた。闘病に打ち勝って、日々の生活にやる気を取り戻したとはいえ、医療用ウィッグだけ若返りをさせてはいけないとそのとき実感した。
ウィッグにもそれなりの適齢期があり、50代が30代のウィッグを被ったら、それだけで浮いてしまうのである。
抵抗はあるけれど女性は“年齢相応”のほうがバレにくい
年齢にあわない若々し過ぎるウィッグは、いくらつむじや髪の仕上がりがナチュラルでも、着けていることがバレバレになってしまう。
それを痛感した私は、入院前の元気なときに撮った旅行に行ったときの写真をカラーコピーで拡大して、医療用ウィッグの発注先に送った。「若々しい髪でなくていいです。
できる限り、この写真にあるような年相応な髪に近づけてください。現在の私の顔は退院して間がないので、少しやせ細っています。その辺も考えると、チラチラっと白髪があったほうが自然です」などと、こちらの気持ちを書き添えて。
- ウィッグの髪のツヤツヤ感を少なくしてもらった。
- 髪のボリュームを落としてもらった。
- 白髪を少し入れてもらった。
- 髪に縮れというか、少しよれた感じのウエーブを一部にかけてもらった。
- 襟足のところでカットしてもらって、毛先のモジャモジャ感を出してもらった。
女性には、“自分を若々しく見せたい”という願望があります。それは自然な欲求ですが、ウィッグがもっている適齢期という見栄えと、自分のいま現在の風体にあった適齢期との間にはズレがあります。
私はそれに気づいてウィッグを上記のように方向転換させてから、他人の目が私のウィッグに注がれることがなくなりました。マッチングしているので気づかないようになったのだと解釈しています。
ウィッグにナチュラル感やリアリティを求めるより、自分の年齢や風体とのマッチングを追求したほうがよほど早道であることを知りました。