「医療用ウィッグがあるのだから~」、それでいいの?
夫の転勤で東京から横浜に越して、私がお世話になっていた通院先も横浜へ転院となりました。東京で面倒をみていただいていたのは女医さんで、抗がん剤治療についても非常にきめ細かく気を使ってくれる先生でしたが、横浜でご挨拶した先生は、強面(こわもて)で口数の少ない先生。気軽に質問したりお願いしたりすることもできないなと思っていました。
定期検診を受けつつ、2度目の抗がん剤治療をすると決まったとき、私は先生に「前回、東京で治療を受けたときも脱毛がひどかったですが、今回もそう思っておいたほうがいいですか?」と聞くと、しばらく机のほうに向きを変えてパソコンに何やら打ち込んだあと、おもむろに私のほうに身体を戻して、「髪はまた生えてきますから」、と無表情でそう言ったのです。
毛が生えるかどうかなんて聞いていないのに、とても不快な思いをさせられました。その後しばらく間をおいて、「心配しなくても、みんな耐えて乗り越えています。命とどちらが大事ですか?」と。この言葉には私のほうが呆気に取られてしまうほどで、付き添ってくれていた娘は、一瞬ですがその先生の顔を睨み返していました。
患者の気落ちなんか関係ないと言わんばかりの横柄な医者がまだいるんだと、私は少し悲しくもなりました。
女性用のウィッグをネットで購入するときの注意6項目
男性とか女性とかで偏見をもってはいけないと思いますが、東京でお世話になった女医の先生とは好対照の、比較にならない先生でした。実は私の闘病生活の大事なツールの1つには、アンベリール社の「シルフィ」という医療用ウィッグがあります。このウィッグは、東京の女医さんのアドバイスを受けて私と娘が共同して探し出したものです。当時のその先生のアドバイスとは
- できるだけ軽いこと。
- 通気性が良くて蒸れないこと。
- 自宅で洗うことができて、衛生面を確保できること。
- ズレないようになっていること(運動・リハビリに大事な点)。
- 脱毛するとウィッグが緩くなるのでサイズ調整ができること。
- 必要に応じて買い替えたほうが良いので高価すぎないこと。
以上の6点だったと思います。それをすべて満たしているのがシルフィという医療用ウィッグでした。それにしても同じ癌治療を専門にしている医師なのに、なぜこんなにも対応に違いがあるのでしょう。
私は東京の男性の先生に、失礼極まりない言葉を返されたとき、「ウィッグや発毛の心配をしているのではなく、脱毛が酷ければそれなりに心の準備をしたいと思うので」と言い返しておきました。
すると先生はそのときも、「ですからウィッグなら、ネットで検索して簡単に買えますよ」 と言い、「帽子よりマシですから」とも付け加えました。女医であれば、女性が傷つくようなこんな言葉は絶対に並べない。おもてなしの世の中になっているのに、意思の疎通さえできない医者がまだいるのだと、娘と私はそのまま帰ってきました。
私はその後、女医さんのいる横浜市内の病院に通院先を変えました。東京でのいい思い出と、女医さんからアドバイスをいただいて買ったシルフィが、私の現在の支え、お守りになっています。